透視図法(パース)を学習し、背景ありのイラストにチャレンジした際に、イラストの構図や配置に悩んでしまう方々は多いと思います。
今回はそういった方々を対象に視線誘導を利用したイラスト構図をご紹介します。
視線誘導を扱うことで、キャラクターなどの主題としたいモチーフが目立ったり、物語性が生まれたりとイラストのクオリティアップに繋がります。
▼目次
イラストの視線誘導とは
みなさんは自然と、この文章を左から右に読んでいますよね。これは何気ないルールですが、私達の目の動きは意識せずに様々な要因によって支配されています。
目の動きは線で表すことができ、目が止まればそこは注目される点となります。
イラストの視線誘導については聞き慣れない方も多いと思いますが、この特性を利用してイラストの構図を考えましょう。
パースを使って焦点を決める
漫画の表現では集中線を用いて、簡単に動きの方向や注目すべき点を示せます。では、イラストで同様の効果を出すにはどうしたら良いでしょうか。
その方法として焦点を使います。
焦点は線が集中し交差する点です。つまり、1点透視の消失点は注目を集める焦点となりえます。このようにキャラクターに焦点を置くことで、主題を目立たせることができます。
また、人の目は通常、近景から遠景へと視線が移動します。遠方の消失点へ向かって伸びるパースラインは自然と人の目を注目すべき主題へと誘導できます。
視線誘導が生きない構図
しかし、構図の焦点を画面の中心に持っていくことはあまり良くないです。
左の例は対角線の交点が消失点となっています。このような構図は単調になりやすく、動的ではありません。
消失点を少し右上に偏らせてみましょう。焦点から目線はスムーズに左へと移動します。焦点へと注目されたあとの目の動きも考えて構図を作るとイラストに動きや物語性が生まれます。
色々な焦点の決め方
直線的なパースではない場合や2点透視の場合でも焦点を決めて視線誘導をしましょう。線が集中し交差する点が焦点となります。
直線的ではない場合
湾曲した海岸線や山の稜線、伸びる雲、自然物は直線的ではありませんが適切に配置することによって焦点を生み出せます。
2点透視の場合
2点透視の場合でも、両側の消失点に向かうパースラインや小物などの配置を工夫することで線の交差を集中させることができます。実線で表されていなくてもその延長線上が焦点になるのです。
視線の流れを遮るテクニック
視線を遮ることでも、主題を目立たせられます。
焦点に向かう線に合わせて、視線は誘導されますが、画面の手前や四隅に物体を配置したり、棒のような縦線で視線を限定的にすることで、主題に視線が集まりやすくなります。
おわりに
このように視線を注目させる、誘導する、遮ることは構図を考える上でとても重要です。その方法はここで挙げた例以外でもたくさんあります。
今回は作為的な例で紹介しましたが様々なシチュエーションのイラストに、この視線誘導のテクニックをプラスしてより魅力的なイラストを作る助けになればと思います。
著・画 あきびん
pixiv:https://www.pixiv.net/member.php?id=2142204
参考文献
『Creative Illustration』(著者:Andrew Loomis)