VR空間で可愛い秘訣をコトブキヤとMUGENUPに聞いてみた。(前編)
2021.01.15
フィギュアやプラモデルで有名なコトブキヤは、「アバターちゃん」シリーズでVRアバターに初参入! 2020年12月19日(土)には、シリーズ第一弾となる「店員ちゃん」が発売されました。
クリエイティブ制作会社であるMUGENUPはこの「アバターちゃん」シリーズにおいて、デザインイラスト制作から3Dモデルの制作まで、コトブキヤさんを幅広くサポートいたしました。
12月19日(土)に発売された第一弾「店員ちゃん」。発売までにはVRアバターファンの熱いアンケートや担当者のこだわりといったドラマがありました。
前編では、アバターに注ぎ込まれたコトブキヤならではのフィギュアの造形ノウハウを取材。後編では、発売までの隠されたストーリーや、VRファンが本当に楽しめるようにと盛り込まれた様々なこだわりを掘り下げていきます。
▽アバターちゃんとは?
アバターコミュニケーションの充実を目指して、コトブキヤが展開する3DCGブランド。フィギュアの制作技術を活かした特殊なモデリングで作られたアバターからVR空間ならではコミュニケーションの楽しさを提供します。互換性のあるアバターを順次展開していきます。
https://www.kotobukiya.co.jp/event/event-230568/
▼目次
△一度中止になったという衝撃的な事情をお話してくれた飯嶋氏。しかしアバターファンの盛り上がりが企画の再稼働につながったという。
飯嶋:
12月19日(土)、「アバターちゃん」シリーズ第一弾としてついに「店員ちゃん」が発売されましたが、実は今回のオリジナルアバターは一度中止になった企画だったんですよ。
木下:
いきなり、すごいネタ振りですね!
飯嶋:
オリジナルアバターは、様々な新規事業のアイデアのひとつとして生まれた企画だったんです。3DデータをビジネスにするにはVtuberもアリなんじゃないか、いやアセットを販売するサイトを作った方がいいんじゃないかなど検討したのですが、その時点では市場性に対する懸念から一度ペンディングになってしまいました。
しかしVRデバイスの普及や「バーチャルマーケット」の開催、コアなファンの熱気に支えられて、アバター市場の拡大していく兆しがはっきりと見えてきました。そこで改めてチャレンジしよう!となったわけです。
その時はまだオリジナルではなく、自社の既存キャラクターを活かした企画でした。
木下:
コトブキヤさんには「フレームアームズ・ガール」とか人気作品もありますもんね。
飯嶋:
既存キャラのアバターからオリジナルへと方針が定まったのは、アバターファンの皆さんへのリサーチの結果でした。コトブキヤとして「Comic Vket1」に協賛し、ファンの皆様にアンケートを取らせていただいたところ、なんと25万文字ものコメントが集まったんです。
木下:
25万文字!全部読んだんですか!?
飯嶋:
もちろん全部読みました。その結果、アバターはキャラグッズではないとわかりました。皆様から「アバターとして使えるものがほしい」という声をたくさんいただいたんです。
木下:
そこでオリジナルのデザインを……となって、MUGENUPに相談をいただいたわけですね。
飯嶋:
はい。デザインイラストやアバター制作だけでなく、MUGENUPさんを通して第一弾「店員ちゃん」のデザインイラストをさいとうなおきさんにお願いさせていただきました。
「店員ちゃん」のデザインコンセプトもアンケート結果がもとになっています。重要なのは「健康的」「元気」「明るい」、あと「過激なデザインではない」ということ。さらに頭身が高すぎないのも重要です。頭身が高くなると、当然、頭や顔のサイズも小さくなりますから、表情が見えづらくなってコミュニケーションがとりづらくなってしまうんです。
木下:
オリジナルであることやデザインコンセプトまで、リサーチ結果を本当に大事にされているんですね。モデルを制作している時も、とてもロジカルな指示をいただきました。
△ 25万文字ものアンケートを徹底的に参考にした「アバターちゃん」シリーズ。白髭氏も木下氏も、ファイルの厚さに驚いていた。
飯嶋:
アンケートをきっかけに実装した要素はたくさんあります。例えば素体が欲しいという多数のご意見を受けて素体を同梱していますが、同時に頭のない素体もセットにしました。アバターの頭部を自分らしいものに交換したい一方で、「頭を取り外す」ということに抵抗を感じる方がいらっしゃることがわかったためです。
木下:
例えデータであっても、ですね。それはわかります。
飯嶋:
またネイルアートを楽しみたいという声が多かったので爪のテクスチャ領域を大きく取ったり、パーツのオンオフや色変えなど改造しやすい作りにもしています。缶バッチや名札は書き換えしやすいUV配置にしており、これも気軽にコミュニケーションを始めるきっかけになる要素として用意しました。
木下:
エプロンや名札などは、店員っぽさがありますしね。
飯嶋:
そもそも、店員であるということもコミュニケーションのしやすさを狙ってのものです。誰なのかわからなくても、店員の格好をしていれば「お茶くださいー」とか話しやすくなりますよね。逆に店員の格好をしていれば「いらっしゃいませー」「ようこそ」など気軽に言えるようになる。「店員ちゃん」が店員なのは、コミュニケーションのための役割づくりなんです。
木下:
コミュニケーションのきっかけになるような設定や、ファンそれぞれの個性のポイントづくり。それもアンケートから見えてきたんですね。
飯嶋:
25万文字のコメントから伝わってきたのは、みんなで同じようなアバターを着て集まるという安心感、そしてその中で個性を出したい、という二つでした。胸の名札に名前を書いたりエプロンの色を変えたり、とにかく簡単に自分らしさを出しつつ、コミュニケーションのきっかけが生まれやすいアバターを目指しています。
△飯嶋氏が自らカスタマイズした「店員ちゃん」。メガネは実際に飯嶋氏がかけているものと同じデザインだそう。胸の名札にも名前が入っている。
飯嶋:
最後になりますが、今回は、企画開発から発売までひととおり全てを担当しました。大変でしたが、とても面白い経験ができました。これから間違いなく成長していくジャンルに、ホビー業界として真っ先にコトブキヤが踏み込むことができたのも、先を走っている感覚や切り開いているやりがいがあって手ごたえを感じます。ただ白髪が増えました(笑)
今後はバーチャル空間で直接販売をするイベントも増えてくると思いますので、まさに「店員ちゃん」としてVR空間での物販を遊んでみてほしいですね。1月末には「NEOKET」も予定されていますし、バーチャルイベントで売り子してる「店員ちゃん」をTwitterで見れる日を楽しみにしています。(インタビューは2020年12月23日実施)
これからも「アバターちゃん」シリーズは新作やアップデートが予定されていますので、ご期待ください。
白髭:
今日、こうやって話を聞いてると初めて聞くことが多くてぼくも驚きました。「すごく可愛い案件だな」と期待してたんですが、ここまで積み重ねていた理論の裏付けを聞いて、ますます楽しみになりました。顔や頭部の監修という造形としては美味しいところだけ関わったみたいで申し訳ない気もしますが(苦笑)
いいものになっていると思います。ぜひVR空間で触ってみてください。
木下:
アバターのモデルを制作しているときから、仕様やこだわりがすごいと感じていましたが、お話を聞いてその意図や理由がわかりました。それだけのアンケートや、ファンに向けていいものを作りたいという気持ちがつまっていたんですね。
今回、こんな面白いお仕事をMUGENUPとしてご一緒できてありがとうございます。自分も楽しんで制作することができました。
これからも続く「アバターちゃん」シリーズ、自分も期待しています。ありがとうございました。
「アバターちゃん」シリーズの最新情報はこちら!
https://www.kotobukiya.co.jp/event/event-230568/
株式会社MUGENUP。2Dや3Dグラフィックの制作をはじめ、映像制作、クリエイティブ制作管理ツールなどを展開する総合クリエイティブ制作企業。