フォロワー数40万人の人気イラストレーターが考える「映えるイラスト」とは? 灸場メロさん『映え作画』出版記念インタビュー!~前編~
2022.06.03
6月3日、いちあっぷ初の書籍レーベル「いちあっぷブックス」が誕生しました! そしてその刊行書籍第一弾となるのが、イラストレーター向けの技術書『映え作画 ~プロ100人が教える魅力的なキャラ作り~』です。現在各種書店や通販サイトにて絶賛発売中となっています。
本書の発売を記念し、書籍内で「映えるイラスト」のレクチャーをしていただいた人気イラストレーター・灸場メロさんに「映えイラスト」についてインタビューを行いました。
前編では灸場メロさんの視点で映える作画における重要な要素について、お話いただきました。本記事、後編では映える作画のトレンドやスキルについてお話についてお伺いします。
▽目次
「映え作画」10年前と今との違い、大きな変化はどこから来た?
映えイラストレーターに求められる、絵のスキル以外の能力とは?
『映え作画』はこんな人にオススメ!
――映え作画のトレンドについてお伺いします。たとえば10年前と今とで、映えるか否かの基準はどう変わっているんでしょう?
メロ:2010年代中頃でいえば今のように絵全体の雰囲気作りよりも、キャラをどれだけ可愛く描けるか、言い換えれば顔の中のディティールをどれだけ細かく可愛く描くかということが重視されていたように思います。
――塗りについてはどうでしょう?
メロ:前ほどしっかり厚塗りしているいわゆる厚塗り系の絵は相対的に減り、最近は髪や肌、服の陰影が以前よりあっさりめの絵が増えてきたなと思っています。
――そういったトレンドの変化はどうやって生じたのだと思われますか?
メロ:私は、近年流行しているソーシャルゲームのキャラ絵の塗りやVTuberさんのビジュアルが、映え作画において指標になっている気がしています。
――確かにVTuberは厚塗りではないですし、絵的にも比較的スッキリしていますもんね。みんなが見ているもの、好きなもののルックの変化によってトレンドが変わっている、という面はありそうですね。
メロ:実際私もVTuberさんの絵を描くときはディティールの描き込みをあえて抑えたりしています。
こちらのジャケットイラスト描かせていただきました。
— 灸場メロ (@9baMelo) September 9, 2021
「モナーク/Monark」と「Awake」とても楽しみです。よろしくお願いします https://t.co/PVJKHEWoBw
――ソーシャルゲームのキャラクター絵も、厚塗りから少しアニメテイストに寄せたタッチのものが目立つように感じますね。
メロ:最近私がPinterest などを見ていて「いいな」と思うイラストは、韓国や中国など海外の方が描いたものだったりします。
たとえば『原神』のキャラ絵の塗りは目標の一つになっていると思いますが、ゲームをプレイしつつファンアートを描かれている絵師さんもたくさんいらっしゃいますし、そういった影響もあるのかなと思います。
――『原神』のキャラクターデザインは日本のアニメ風ですから、映えるイラストに国境は関係なくなってきているのかもしれませんね。特に地理的に近い国の方々とは「可愛い!」「映える!」と感じるもののセンスが近いように感じます。
メロ:お互いにいいとこ取りをし合っていて、もう垣根は分からなくなってきているように感じます。
海外の方は、デッサンの正確さや立体感、ライティングの扱いなど、いわゆる美術としての基礎画力が高い方が多いように感じます。
一方日本のイラストレーターさんはアニメや漫画的なディフォルメされたキャラクターデザインの魅力や線で描く絵、平面的な美しさに特に秀でている印象です。
それらのベクトルの違う良さがハイブリッドされたイラストに、今私たちは「映える!」と感じているのではないでしょうか。
――すごく納得できるお話です。
メロ:今お話したのは私が思う私にとっての「映え作画」なのですが、この本(『映え作画』)を見ていると他のイラストレーターさんはまた別の方向性やお考えがあるように感じます。映え作画に対する考え方は人の数だけあるのかな、と思います。
――映えイラストレーターにとって、流行にキャッチアップしていく能力も重要なのかもしれないですね。
メロ:それは大事なことだと思います。流行を追いかけていくことで、流行っている作品からどんなファンアートが生み出されているのかとか、そこからどんな表現が生み出されているのかだとか、みなさん独自に観察されているんだと思います。
それをSNSなどで見て自分の絵に応用して取り込んで、その繰り返しだと思います。私も新しい髪の描き方や色使いなど、日々研究しています。
――トレンドを追うこと自体、メロさんはお好きな方ですか?
メロ:そうですね。漫画やアニメ、映画、音楽など様々な分野のランキング(トレンド)は欠かさずチェックしています。
――メロさんのTwitterを見ていますと『呪術廻戦』をはじめ大型作品のファンアートが多いですね。ファンアートを描くにあたっての指針などはあるんでしょうか?
メロ:ファンアートを描く時は、作品のいちファンとして好きなように描いています。作品から受けたエネルギーをそのまま絵にする感じで、一番楽しい時間です(笑)。同じ作品のファンが喜んでくれることが自分の励みにもなりますし、結果的にお仕事につながることもあります。
呪術廻戦×TOKYO CULTUART by BEAMSのコラボアイテムにて高田ちゃんのTシャツイラストとタオルをデザインさせていただきました。
— 灸場メロ (@9baMelo) September 24, 2021
高田ちゃん推しの方はぜひ! https://t.co/iJZ3U0rfSR pic.twitter.com/DNPOFzefYq
――好きな作品に打ち込みながらそれが仕事につながるなんて理想的ですよね。
メロ:見る人は見てくれていますので、好きなことを発信し続けて名前を憶えていただくことは今イラストレーターとして活動する上で大事なことかなと思います。
――作品の公開にはSNSが不可欠だと思いますが、TwitterやInstagramなど、使うSNSによって受け手の反応の違いなどはありますか?
メロ:私の場合Instagramは主に海外向けということで主に英語で発信しています。Twitterは国内の方をメインターゲットとして、面白いと思ってもらえるファンアートやお仕事実績紹介の場にしています。
Twitterではコメディ寄りと言いますか、キャラの組み合わせや他作品とのクロスオーバーなど、どこか面白みや構成力、企画力のあるイラストの方が反響が大きいように思います。
一方pixivでは1枚絵としての完成度が高い、アップにして隅々まで見てしまうような高クオリティな絵の方が好まれる傾向があるようです。
――TwitterにはいいねやRTなど拡散させる機能がありますが、pixivにはそういった機能がないことが影響しているのかもしれませんね。
メロ:メディアによって何が映えるイラストになるのかも違うと考えていいでしょうね。
――様々な映えがある中で、『映え作画』は参考になる本になりそうでしょうか?
メロ:はい、先ほども申し上げましたが様々な方が自分にとっての「映え」を表現されていますので、私も読むのが楽しみです。たとえばゆつもえさん(@yutsumoe)の絵は一見して「綺麗だな」と思いましたし、Twitterに上げられている絵は小物の情報量の多さが緻密で素敵ですよね。
背景のある絵たち pic.twitter.com/50fUfOYkC0
— ゆつもえ (@yutsumoe) September 8, 2021
――この本はどんな人に向いている本でしょう?
メロ:これからイラストでお仕事をしていきたい方や、SNSでの反応をちょっと増やしたい方、学生の方から既に絵を描いてる方まで幅広く活用できる本だと思います。
――それでは最後に、『映える作画』の読者のみなさまに向けて、メロさんからメッセージをお願いいたします。
メロ:私も映えたいです。映えるよう頑張ります!
――ありがとうございました!
聞き手・文:いしじまえいわ
編集:いちあっぷ編集部
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