イラストテクニックが盛りだくさんな120分に密着! イラストレーター・漫画家 Anmiさんによるライブペイント&添削会レポート
2018.06.28
全国の総合学園ヒューマンアカデミーにて大好評開催中のイベント『<全国開催>有名イラストレーターによるライブペイント&添削会』。これまでにプロイラストレーターとして活躍しているクリエイターの方々にご登壇いただきました。
第四弾はlackさんにお越しいただきました!ライブドローイングをはじめ、イラストレーターを目指す方々が気になる質問にもお答えいただきました。
《lackのプロフィール》
元株式会社レベルファイブ勤務。現在はトレーディングカードゲームやソーシャルゲーム、ライトノベルなど、幅広いジャンルを手掛けるイラストレーター。「FRESH!」「YouTube」では、イラスト制作番組「珈琲紳士の部屋」を生配信している。
■代表的な作品・お仕事
▼目次
質問1:学生時代と比べ、会社員のイラストレーターになって気づいたことはありますか?
質問2:会社員とフリーランスを経験していますが、フリーランスに向いている人とは?
質問3:フリーランスで活躍するためにはどのようにすればいいのでしょうか?
総合学園ヒューマンアカデミーの次回イベントは2019年1月19日(土)!
※本記事はヒューマンアカデミー株式会社の提供よりお送りいたします。
今回のライブドローイングではハロウィンをテーマにキャラクターイラストを描いていただきました。通常のお仕事でいう、カラーラフまでの工程となります。
75分間の限られた時間中で素晴らしいイラストを描いていただきました!
▲ラフの描き始め、さらさらと作画を進めています。ここまで7.8分ほど。
――ラフ画を描くポイントとは?
lack:ラフ画を描くときのポイントは、力まないことです。さらにキャンバスを小さく描くこと。そうすることで筆の運びが早くなります。
――普段はどのくらいのスピードで制作しているのでしょうか?
lack:カラーラフなら長くても2時間程度で仕上げています。
僕の場合ですが、速く描くコツは、あらかじめ頭の中で構図を決めてから描くことです。考えながら描こうとすると迷いが生じるので、ラフ作業に時間がかかってしまう方は、構図は考えてから取り組むと良いと思います。
また、背景ありの一枚絵だと14~16時間ぐらいで完成させています。1日14時間ぐらいパソコンの前にいるので、1日一枚ぐらい描く感じです。
▲キャラクターのシルエットが描けたら、キャラクターを選択範囲で囲いレイヤー分けします。はみ出さず塗れるようなるので、作業が効率的になります
▲独自のグラデーションマップやブラシはlackさんのBOOTHで販売されています。
lack:着色では、グラデーションマップベースに使用します。
▲左:グラデーションマップを乗せる前、右:グラデーションマップを乗せた後
lack:グラデーションマップを載せたら不透明度を調整します。モノクロで描いたラフに色が乗っかり、配色の補助になります。
lack:さらに、その上から乗算で色を乗っけると、下塗りのピンク色っぽいのが混ざった色になります。色幅がありつつ、統一感のある表現が自然とできますよ。
▲色を乗っけると、こんな感じ仕上がります。
▲さらに、ライティングを入れたもの。硬めのブラシでハイライトを入れ、エアブラシで削るといった作業を繰り返す。
lack:イラストを調整するため、前後感に合わせてパーツを分けていきます。調整対応が楽になり、速く描けるようになります。
▲前後感に合わせて分かれたパーツ。
▲ここまでで、キャラクターのカラーラフが終わりです。約50分の出来事。ライブドローイングの時間がやや余りましたので、引き続き背景も描いていただきました。
▲丸を描いて、柵を足すだけでも夜の窓っぽく見える。
lack:背景はいろんなモチーフが重なっているので、難しく感じがちだと思いますが、いろんなモチーフのラフを描いて、それを選択範囲で切り抜いて、個別に描く方法を取ると描きやすいです。
例えば、ビルなどの人工物は四角形ばかりなのでやりやすいと思います。自然物も同じです。
―― 背景が苦手です。練習する上でどうすればよいのでしょうか?
lack:背景を上達させるには実物の観察は絶対です。写真を見るのもありますが、実際に見たほうが情報量を多く得られるので気付きが多いです。
絵を練習するときは、自分が苦手なものに積極的に挑戦してみましょう。得意なものを描いても前進しないので、苦手なものにチャレンジです。
▲光に照らされるシルエットを表現するだけでも、背景がそれっぽく見えます。
―― 逆光など光や影の付け方がドラマチックに感じます。意識していることは何でしょうか?
lack:ハリウッド映画のライティングを意識して描いています。
コンセプトアートなど海外は黒に沈んだライティングが好まれることが多いのですが、日本のライトノベルなどのイラストは黒に沈みすぎないライティングを好まれる印象があるので、適材適所にライティングについて考えてみると良いと思います。難しいところではありますが……
lack:以上で完成です。
今回の作品タイトルは「ハロウィン前夜の仕込み作業」。キャラクターイラストなので全面にキャラクターを大きく描き、状況がわかりやすくなるよう背景を描いています。
最後に、僕が運営しているイラスト制作番組「珈琲紳士の部屋」では、ブラシの配布やイラスト制作に関する様々な質問により深く回答したりしていますので、気になったたら見てね。
▼珈琲紳士の部屋
続いて、その他にいただいた質問と回答の一部をご紹介します。
lack:ゲーム会社に入社してすぐに、花形であるキャラクターデザインやコンセプトアートといったものに関われる機会はほぼないのが現実です。
僕は運が良くて、キャラクターデザインの仕事に携われましたが、多くのデザイナーはアイテム制作やUIデザインなどの役割を与えられるケースが多々あり、イラストを描く機会がない可能性もあります。
そのキャラクターデザインの仕事を得るには、実力はもちろんですが、キャラクターデザイナーの席が空いていたりといった運も必要です。
キャラクターデザインの仕事はクオリティだけでなく、速さも重要な仕事です。キャラクターデザインは最初の制作工程なので、ここが遅くなると3Dやプログラマーといった後工程の人たちの作業時間が短くなってしまいます。そういった責任的な意味でも重要な仕事です。
lack:人付き合いが苦手だったり、自己管理が出来ない人は、フリーランスで仕事するには向いていないと思っています。
自己管理が出来ないと向いていないというのはイメージしやすいと思いますが、人付き合いに関しては、「人付き合いが仕事になるケース」が多々あるからです。
会社員であれば、飲み会や交流会といった場でコミュニケーションを図らずとも仕事が勝手に来るので生きていけますが、フリーランスであれば積極的に人と関わらないと次に繋がるチャンスが得にくくなります。
自己管理については、やはり締め切りを守れるかです。締め切りを破っても仕事が来る人は相当上手い人ではないでしょうか。
lack:僕の場合、3年を目処に会社を退職して独立するキャリアビジョンを持っていました。
イラストレーターとしてゲーム会社に入社して、絵の上手い先輩から学び、その傍らで、趣味で描いたイラストを通して、知名度を高めていました。そのおかげで独立してからも仕事に困らず活動が出来ています。
つまり、フリーランスを目指すなら、学生のときからしっかり絵を描いて、会社に入り、上手い人から学びながら、プライベートで知名度を高めて、独立するのがオススメです。
最後は作品添削会です。全国の総合学園ヒューマンアカデミーに在学中の皆さん・一般の方からのイラストをlackさんが添削する企画。たくさんの応募の中から抽選で選ばせていただきました。
■作者による作品のコンセプト
ハロウィンの赤ずきんの格好をしているキャラクターに声をかけると、実は「本当はオオカミだぞ」と襲われるシチュエーションです。
lack氏:
そのシチュエーションを一枚絵で伝えるのは難しいと思いますので、無理がないシチュエーションを考えるのが良いと思います。
オオカミという設定であれば、耳を付けたりすると分かりやすくなると思います。八重歯も付いているようにも見えますが、もう少し分かりやすく描いてあげると良いでしょう。ただ、表情とかも踏まえて肉食系らしさが伝わってくるのはいいですね。
あとは、赤ずきんの「頭巾」が、「ジャケット」をかぶっているようにも見えるので、頭巾らしく表現してみてはいかがでしょうか。
影色を黒くしすぎると重くなるので、少し赤い布であることが伝わるように、暗い赤で頭巾の影を表現してあげると良いと思います。
■作者による作品のコンセプト:
ノベルゲームのバトルシーンをイメージしました。白のキャラクターと赤のキャラクターが同じチームの設定です。
白のキャラクターは自我がありつつも、敵に体の自由を奪われて無理やり攻撃されている状況。その状態の故に、赤のキャラクターはまとも戦えないシチュエーションです。
lack氏:
1枚絵にしては設定が多いので、テキストによる補助が必要かなと。
同じチームという設定を伝えたいのであれば、両キャラクターに同エンブレムをつけたり、同じ服装にするなどの要素を入れてあげると分かりやすくなるかなと思います。
攻撃したくないんだろうなというのはキャラクターの表情から伝わってきます。臨場感を出そうと砂埃が舞っていたり、ぼかしを入れて演出しようとしているもいいですね。
ただ、背景が単にぼかされているだけなので、目指す臨場感を演出するのであれば、CLIP STUDIO PAINTの、フィルターの「放射ぼかし」を使うことで、集中線のようなにぼかしを入れられるのでオススメです。
さらに、飛沫ブラシでチリみたいのを散らせてあげると、粒子が方向性をもって散っているように見せられるので、砂埃が舞っている感をより演出できます。
■作者による作品のコンセプト:雲の中に住む龍です。
lack氏 :
表現したいものが上手く表現できていますね。あとは龍や雲のクオリティを上げることだと思います
雲は雲ブラシをそのまま使っているのかなと思いますが、奥の雲と手前の雲のクオリティが若干怪しいです。
雲の上達方法として、実際の雲海をみて、雲ブラシを使わずに、雲を描いてみると良いと思います。光や立体感を頭で理解した上で、雲ブラシを使うとクオリティアップに繋がります。
また、強い色味を画面全体に使うのをためらっている感があるので、乗算で全体を暗くして、奥の方だけ乗算を消して明るくしてあげると画面の色味が良くなります。
龍に関しては、太陽の位置からして逆光なので、逆光になるよう影を落としてあげます。目が光っている設定であれば、光源の一つとして目の中心が明るく表現されているのも良いでしょう。さらに、髪の毛と同じで束毎にライティングを入れています。
以上、lackさんによるライブドローイング&添削会でした!
今回も参加者からたくさんの質問が集まり、各々が持つ疑問や課題が少しながらでも解決できたセミナーになりました。
その後、Twitterでは参加者の感想もツイートされていますので、こちらも合わせてご覧ください。
どこかに講師として行って、そこの生徒さんの前だけでライブペイントすることはあったけど、全国にライブ中継されてる中で描いたのは初めてだったから割と緊張したわ… 普段の生配信とあんまり変わらないはずなのに何あの緊張感( ͡° ͜ʖ ͡°)
— lack (@lalalalack) 2018年11月10日
※詳細はリンク先をClick!
全六回を予定している、『<全国開催>有名イラストレーターによるライブペイント&添削会』。全国各地の総合学園ヒューマンアカデミー校舎にて無料で参加することができます。
次回は2019年1月19日(土)に開催!特別講師はタカヤマトシアキさんです。
<プロフィール>
デザイン会社員時代ではエアブラシなどのアナログ画材で食品パッケージや、建築パース等のイラストを製作していた。フリーに転身後、「ドラゴンドライブ」のカードイラスト/アニメ・ドラゴン原案に関ったことがきっかけとなり、玩具・ゲーム・書籍等のイラストを手掛けるようになる。
<代表的な作品>
2019年1月19日(土)にはタカヤマトシアキさんによる特別セミナーが開講!
こちらも無料イベントですので、気になる方はぜひ参加をお申し込み下さい!
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