「raytrektab 10インチモデル」1台でアニメーターの仕事はできるのか? 人気アニメのキャラデザ・作画監督を務める田中将賀さんによる体験レビュー
2019.12.25
お絵描き用に特化したWindows搭載のタブレットPC 「raytrektab 10インチモデル」。液晶ペンタブレットとパソコンの両機能を備えているため、お絵かき環境をスマホからパソコンに乗り換える方や、サブ機として使用する際に特に重宝されている製品です。
今回は『とらドラ!』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『君の名は。』『ダーリン・イン・ザ・フランキス』『天気の子』『空の青さを知る人よ』など、数々の人気アニメ作品でキャラクターデザインや作画監督を務める田中将賀さん(@tanamasa0119)に、インタビューとライブドローイングを通じてraytrektab 10インチモデルを使っていただき、プロが感じた評価や手応えを忌憚なくお話しいただきました。さらに田中将賀さんのライブドローイング模様やメイキング映像も公開!ぜひご覧ください!
▷ メイキング映像はこちら!
▼目次
※本記事は株式会社サードウェーブの提供によりお届けします 。
raytrektab 1台でアニメーターの仕事はできる
▲raytrektab 10インチモデルを体験レビューいただいた田中将賀さん
―― 早速お話を伺いたいと思います。raytrektab 10インチモデルの手応えはいかがでしょうか?
――いきなりそこまで言っちゃっていいんですか!?
昔は紙やライトボックスがある環境でしか仕事はできませんでしたが、これなら持ち運びも楽ですし、喫茶店でも仕事ができるので便利です。
▲田中将賀さんのライブドローイングの過程(本編はこちら)。冬をテーマにイラストを描いていただいた。ラフでは全体のシルエットを決めてから、拡大縮小ツールなどを用いて全体のレイアウトを決めていった。
――消しゴムのカスも出ませんしね。
例えば、今回のライブドローイングの題材でベンチを描くときに「ベンチの肘掛け」のデザインって曖昧なので調べてから描くのですが、絵を描きながらGoogle画像検索や写真共有サービスのPinterestなどを使って資料を探すこともできます。
――画面の大きさは気になりませんか?
もちろん「小さすぎて調べ物を同時にするのは無理!」という人もいると思います。でも機能が備わっているのは事実ですから、いざとなったら使えるという点では心強いですね。
Windows搭載のタブレットという利点
――特に「使える!」と感じた点はどこですか?
僕は自宅でWindows のパソコンとワコムの液晶タブレットCintiq Pro 24インチモデル、ペイントツールはSAIとCLIP STUDIO PAINTを使っています。出先ではアイデア出しのラフスケッチや移動中の動画視聴などにiPad Proを使っていますが、そういったこともraytrektab 10インチモデルなら1台でできますね。
SAIはiPadでは使えないので、Windowsの利点ですね。
raytrektab 10インチモデルではSAI2の起動は確認していますが、動作を保証するものではありません。また、SAIは動作しませんので、SAIを使用している方はSAI2にアップデートください。
▲田中将賀さんのライブドローイングの過程(本編はこちら)。raytrektabの画面はタッチ操作ができるので、キャンバスの回転も手で直感的に行える。
特に僕と同じく普段からWindowsをメインで使っている方にはオススメだと思います。
―― raytrektab 10インチモデルには使用期間制限なしの「CLIP STUDIO PAINT DEBUT」がバンドルされているので、買ってそのまま作画の作業ができますね。
さらにiPad版のCLIP STUDIO PAINT PROとEXは月額課金でしか購入できないのに対して、Windows版のCLIP STUDIO PAINT PROとEXは買い切りで購入することもできますしね。
CLIP STUDIO PAINT DEBUTはデジタル制作がはじめての方向けの入門モデル。
CLIP STUDIO PAINT PROと EXはDEBUTの上位モデルです。CLIP STUDIO PAINTを使用するプロのクリエイターの方々はPROとEXを使うことが多いです。
――先ほど「アニメーターの仕事はこれで大抵できる」とおっしゃっていましたが、初めてアニメを作ってみたい! という方にも使えるでしょうか?
最近はTwitterなどで線撮(線画素材のアニメーション映像)を公開されている方がいますが、こういった「タブレット+ CLIP STUDIO PAINT」という環境で作られているケースもあるんじゃないでしょうか。
カメラワークをつけたり、凝ったことをしようとすると面倒ですが、raytrektabとCLIP STUDIO PAINTで基本的なことはできるのでアニメ制作をすぐに始められると思います。
――そうですね。「CLIP STUDIO PAINT DEBUT」やペンが同梱されていることを考えると、iPad Pro や Surface Proと比べても安価なケースが多いようです。
▲田中将賀さんのライブドローイングの過程(本編はこちら)。ラフ→線画→塗りの流れで描かれている。
ペンが2本付属され、それぞれ描き味が異なる
―― raytrektab 10インチモデルを使ってみて、普段の制作環境との違いは感じられますか?
ただ、鉛筆型のペンはCintiq Pro 24と比べて粘りのある描き心地です。
――それはどういうことでしょう?
―― raytrektab のデジタイザーペンはデフォルト(DG-D10IWP標準デジタイザーペン)のものと三菱鉛筆とのコラボモデル(三菱鉛筆9800 デジタイザーペン)の2種が付属されているのですが、その違いは感じられますか?
鉛筆型のペン(三菱鉛筆9800 デジタイザーペン)は適度な引っかかりを感じるのに対して、デフォルトのペン(DG-D10IWP標準デジタイザーペン)は摩擦をあまり感じずにサラサラと描けます。
どちらも描きやすいので使う人の好みで使用するのが良いと思います。
―― 逆にここは使いにくかった、というところはありましたか?
片手で持って絵を描くのはちょっとしんどいと感じました。絵を描くなら机にしっかり置いて使いたいですね。
田中将賀がraytrektabで描いてみた。
―― インタビュー、ライブドローイングを通して描きながらお話いただいていますが、気は散りませんか?
『ダーリン・イン・ザ・フランキス』や『空の青さを知る人』の企画会議では主要メンバーが集まって、「そのキャラクターはこんな感じですか?」とその場でアイデアを出しながら作品作りをしていました。
その場で描いて見せたほうが早いし、会議も盛り上がるんです。そういう場にもraytrektabは使えますね。
――そうなんですね! ……そうこうお話ししているうちに、いよいよ完成です!
/メイキング映像はこちら!\
Twitterハッシュタグは「#raytrektabで描いてみた」。raytrektabで絵を描いたらハッシュタグを付けて投稿してみよう!
―― 最後にraytrektabの購入を考えている方に一言お願いします。
一方で、プロの制作環境はパソコンでの作業がほとんどだと思います。
今はスマホで描いている方がPCに移行する橋渡しとしても、まずはこういうマシンを使うのはアリなんじゃないかと思いました。
―― 田中将賀さん、ありがとうございました!
(取材・文:いしじまえいわ / 撮影:浅野誠司)
『raytrektab』の詳細を知りたい方は以下のボタンからどうぞ!
Wacom feel IT technologiesを搭載した筆圧感知ペン付き10インチタブレット。
4096階調の精細な筆圧感知とレスポンスの良さは、まるで本物の紙に描いているようななめらかな描き心地を感じさせてくれます。