デビューするならフランスがアツい! 日本人漫画家を育てるフランスの出版社、Ki-oonって?
2016.05.19
ボンジュール!フランスの漫画専門出版社・Ki-oon (キューン)のキムです。前回の記事(https://ichi-up.net/2016/064)に書いたように、フランスで漫画が大人気です。弊社がオリジナル作品を作るためにオフィスを東京で開くほどです。
こちらが2015年の漫画ベストセラーランキングと、2016年3月単行本別売上げランキングです。
出典:http://shosekiranking.blog.fc2.com/blog-entry-1346.html
GFK (マーケットリサーチ専門会社)
日本のベストセラーがフランスでもランキング上位に入っています。アニメの影響もあり、日本と同様、『ONE PIECE』、『NARUTO』、『FAIRY TAIL』、『BLEACH』、『進撃の巨人』そして『七つの大罪』のような少年漫画が特に読まれています。
ただ、それ以外のジャンルにおいては、日本人の好みといくつかの違いがあるようです。シリーズ単位の年間ランキングを見ますと、共通点が多いことがわかりますが、より細々に単行本単位の月間ランキングを分析すれば、相違点が見えてきます。
「ウケている漫画」「ウケていない漫画」を見て、フランスの国民性と漫画の趣味を読み解いてみましょう。
日本では人気があっても、フランス人に一番通じていないのは、萌えという概念のようです。かわいい女の子キャラの日常を描いただけ、というような作品はフランスでは流行りそうではありません。
キャラクターそのものよりも、ストーリーが重視される傾向にあるのです。そもそも、二次元のキャラクターに「俺の嫁」という感覚を持つオタクの人口が日本より少ないです。
フランス最大の日本カルチャーイベント「ジャパンエキスポ」には男女グループやカップルでの参加が目立ち、アクティブな漫画ファンが多い印象です。男女の間にそれほどの隔たりがありません。
▲二組の漫画好きカップル。ダブルデートのついでにジャパンエキスポで『進撃の巨人』のグループコスプレ!(お子さんは『雪の女王』のコスプレにしました)
女性読者の価値観にも違いがあります。例えばOLが主人公の恋愛漫画など、大人の女性向けの漫画は未だに定着していません。
フランスではもともと、少女漫画が日本ほど流行っていないのです。ですから、「josei manga」と呼ばれる大人の女性向けの作品はさらに流行らないというわけです。
大人になったら、恋愛、ロマンスだけではなく、仕事、結婚、子供というような課題が出てきますよね。それに対する考え方がおおいに異なります。
共働きが当たり前であるフランスでは、結婚→退社→出産が前提となっている話に、共感する人が少ないからです。日本社会の暗黙のルールが理解されていないのです。
理解しにくいことといえば、ユーモアも難しいですね。
日本で大人気の『銀魂』や『あずまんが大王』の面白さは通じにくいです。皮肉とブラックジョークを好むフランス人は、日本の明るいボケとツッコミや、4コマ漫画の起承転結に戸惑います。加え、流行りの芸能人のモノマネのような時事ネタがそもそも伝わらないという単純な問題も生じます。頭に「?」が浮かび、寒い風が吹いてくるのみ……。
逆に日本ではあまり売れなくても、フランスではベストセラーになる作品もあります。
『指輪物語』のファンが多いフランスでは、漫画もダークファンタジーが大人気です。日本よりフランスで売れている代表的な作品は、 Ki-oonが出版している『ユーベルブラット』(塩野干支郎次 著)です。エルフ、魔法、最悪の敵、ダークヒーロー……そういうのに弱いんですよ、フランス人は!
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▲「ユーベルブラット」にフランス人の大好きな要素が揃っています:エルフ、ファンタジーの世界、鎧と剣……!
ダークといえば、残酷なサスペンスも非常に人気です。Ki-oonが刊行している作品ですと、『王様ゲーム』の漫画シリーズが年間ランキングのトップ10に入るほど売れています。
同じくサスペンス作品の『ダーウィンズゲーム』や『Secret』も順調に売上を伸ばしています。ドラマ化もされた大ヒットのアメコミ『ウォーキング・デッド』のように、次に誰が死んでしまうのか?絶望に陥った人間がどう化けていくのか?というスリルがたまりません !
▲『王様ゲーム』(作画:連打一人 / 原作:金沢伸明)、『Secret』 (外海良基 著)、『ダーウィンズゲーム』(FLIPFLOPs著):いいやつも死ぬという残酷でスリリングな設定がフランス人の心を鷲掴み!
フランス人は血に飢えているだけというわけではありません。たとえば、古き良き日本を描いた作品で知られる谷口ジローは、フランスのコミック業界のスターです!
谷口ジローの絵柄とナレーションはフランスの伝統的なコミック・バンドデシネに似ているため、フランス人の漫画ファンだけではなく、一般読者にも愛読されています。『孤独のグルメ』、『とも路』、『遥かな町へ』、『歩くひと』を始め、郷愁を呼び起こすような谷口ジロー作品はほぼ全てベストセラーになっています。
ルーブル美術館の9人の漫画家をテーマにした展示で、日本から選ばれた2名は「ジョジョの奇妙な冒険シリーズ」の作者、荒木飛呂彦、そして谷口ジローです。それだけフランスでは人気のある作家なのです。
今回は日本で人気の漫画、フランスで人気の漫画の相違点にスポットライトを当てましたが、それは「フランスと日本が根本的に違う、理解しあえない」というメッセージでは全くありません。漫画は何よりも両国のかけ橋になっています。現に漫画がなかったら、私は漢字を一所懸命勉強しようと思いもしなかったでしょう。(難しいもん!)それに、今こうやって日本語でコラムを書くようなこともなかったに違いないです。やはり、漫画の力はすごいです!
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Ki-oon公式ウェブサイト(フランス語のみ) : http://www.ki-oon.com/
東京オフィス連絡先:
代表名:キム・ブデン
住所:c/oフランス商工会議所
〒102-0085東京都千代田区六番町5-5 飯田ビル
メール:kim@ki-oon.com
電話番号:03-6824-9596
Ki-oonの東京オフィス代表キム・ブデンについて:講談社の国際事業局で四年半働いた後一旦帰国、三年半フランスの漫画出版社・PIKAの編集長として勤め、去年の10月からKi-oonの在日オフィス代表として日本に戻り、現在に至る。
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