メイキングで分かる!意外と豪華にできちゃうアニメ塗りの方法

メイキングで分かる!意外と豪華にできちゃうアニメ塗りの方法

デジタルイラストには厚塗り・水彩風塗り・ギャルゲ塗りなど、様々な塗り方があります。その中で今回は、「アニメ塗り」をテーマにイラストレーターの林檎坂マリコさんが、自身のアニメ塗りテクニックをメイキングで解説してくれました。

 

それではどうぞ!!

 

アニメ塗りを始める前に

イラストレーターの林檎坂マリコです!

今回はアニメ塗りメイキングということで、初めてデジタル絵に挑戦する方や、塗り方のレパートリーを増やしたい方、アニメ塗りのレベルアップをしたい方の、手助けになればと思います!

 

毎度おなじみハロウィン子ちゃんと一緒に、アニメ塗りの楽しさをお伝えしていきます!アニメ塗りはシンプルでとっつきやすいので、ぜひ試してみて下さい。

 

▽過去に登場したハロウィン子ちゃん

使用ソフト

私は工程によって使用ソフトを分けています。

  • 線画、色塗り:SAI
  • グロー効果、背景の雰囲気作り:CLIP STUDIO PAINT

としています。グロー加工以外は通常レイヤーのみで作成しておりますので、どのソフトでも通用する内容です。

レイヤー構成

レイヤーは上からこのように構成しています。

  • 線画レイヤー
  • 光レイヤー
  • 影レイヤー
  • ベースレイヤー

色塗りメイキング

それではさっそく制作工程に入っていきましょう。


今回はアニメ塗りのメイキングですので、線画までは既に完成しているものとします。

1.アニメ塗りにマッチする線画を作成する。

林檎坂マリコ

アニメ塗りは色の境目がぼやけておらず、パッキリと分かれているのが特徴です。


その為、線画はしっかりした線で作成しておかないと、線が面の色に負けてしまいアニメ塗りのハッキリとした色合いが伝わりにくくなります。

 

線画も絵の一部なので、手を抜かずに頑張りましょう!

 

線画を上手に見せるコツは、

  • 顔周りの線を太くする
  • 物体と物体が交差する個所で、前に来る物体の方の線を強調する

という方法です。このテクニックを使うだけで、線画だけでも立体感を出すことが可能です。

2.線画の色を変える

林檎坂マリコ

線画レイヤーを不透明保護し、線画の色を黒から茶色に塗り替えます。

線画が黒のままだと、黒が強すぎて全体の色合いと馴染みにくいからです。

林檎坂マリコ

左が黒の線画、そして右が茶色の線画です。黒の線画より、線画の主張が弱まり色合いのバランスが均等になりました。

 

アニメ塗りは水彩塗りや厚塗りに比べて、情報量が少なく見える原因に、色数が少ないということもありますが、線画の色を真っ黒にしていることも原因のひとつです。

 

線画も使用する色に合わせて、適宜変えていきましょう。

3.配色をする

線画が整ったら、ベースの色を配色していきます。

林檎坂マリコ

ハロウィン子ちゃんの衣装には、かぼちゃを模した段のある部分があります。このような部分は、光源に沿って面の明暗を塗り込みます。

 

その際には少しずつ色が明るくなっていく(または暗くなっていく)ように変えていきます。色を強く変えすぎると、色の繋がりが途切れてしまうので、丁寧に繋いで行きましょう。

林檎坂マリコ

プリーツスカートや葉っぱ、みかんの房など、細かい面があるものをアニメ塗りで塗る際には、細かく配色していきましょう。後々の完成度が上がります!

4.大きな影を入れる

林檎坂マリコ

光源の位置を決めたら、大きな影を入れていきます。影を入れる量は、面1つに対して、面積の50%程度の感覚でざっくりと入れます。

 

アニメ塗りは手数が少なく、パーツの面積が広くなりやすいので、多めに影を入れてもバランスが取れます。

 

通常のアニメ塗りなら、ハイライトを入れて終了……となりますが、一枚絵のアニメ塗りはさらに手数を増やして、豪華にしていきます。

5.さらに濃い影(2影)を少し入れる

林檎坂マリコ

大きく入れた影と線の境目に、濃く細かい影を差します。また、物体と物体が交差する部分にも少し濃い影を差します。

 

濃い影を入れたお影で、画面が引き締まり、メリハリができます。駄洒落です。

6.線画の色を「細かく」変える 

林檎坂マリコ

線画を周りの色に馴染ませました。面で見せるアニメ塗りにおいて、面を説明する線はものすごく重要な要素です。

 

茶色のままでは違和感が出てしまうので、隣接する面に合わせて線の色を変えましょう。

7.顔や肌にエアブラシで色を差す

林檎坂マリコ

アニメ塗りにおいて、顔にはあまり影を入れないようにしています。色の境目をぼかさないアニメ塗りで、顔に影を忠実に入れてしまうと、重たい雰囲気になる恐れがあるからです。

 

ですが、顔に入れる影を控えめにすると、顔がのっぺりとした印象になってしまいます。そこで、エアブラシを使って顔にふわっと色を入れます。女の子が化粧をするように、頬にチークや唇に色を差すと良いでしょう。

 

ここで気を付けたいのが、肌に差した色が、肌と地続きになっているかどうかです。肌に合った色を、薄い色→濃い色と乗せて、自然に色を繋げましょう。

林檎坂マリコ

矢印の方向にエアブラシを動かしてあげると、チークの淡い色と肌がうまく馴染みます。

 

顔に入れた色を、他の肌にも乗せて、統一感を出します。差し色を顔だけに入ると、残りの肌部分との情報量が噛み合わず、顔だけ頑張りました!感が出てしまいます。

 

化粧と同じで、ファンデーションを顔だけに塗ると、首と顔の色がチグハグになってしまいます。顔の塗りは実際の化粧を意識しましょう!

8.光を入れる

林檎坂マリコ

影のテイストに合わせて、光を控えめかつ物体に合わせて滑らかに入れます。


アニメ塗りで入れる光と影は、立体の正確な情報を伝える、というよりも、画面を華やかにするデザイン、という意識の方が近いと考えております。

 

光に使用する色も、光だから明るい色!というのでなく、色を考えて選びましょう。光だけ浮いてしまうのでなく、かといって光が埋もれるのでもなく、縮小表示をしても潰れない光りの色を選ぶのが大事です。

9.ハイライトと反射光を入れる

林檎坂マリコ

物体の外側と内側に、それぞれ最も明るい色と影よりも少し明るく青みがかった色を入れます。

 

一番目立つ白の光を外側に入れると、画面が引きしまり、豪華感を出せます。そして、反射光として、物体の影側の際に、影よりも少し明るく、青みがかった色を入れます。

 

塗り込む面積は狭いですが、このひと手間だけで、グッと完成度があがります!

10.ベースと影に、淡くエアブラシをかける。 

林檎坂マリコ

ベースと影に、エアブラシでグラデーションがかった影を入れます。


物体の光が当たる部分には明るい色を差し、影の入りの際にはやや濃い色を差し、影の重たい部分に、薄い色を差します。

 

この差し色のお陰で、アニメ塗り特有の面のベタッとした感じを緩和でき、豪華さを出せます。

 

ここで気を付けたいのが、ベースの色とかけ離れた色を選ばないことです。あくまで、面の飾り付けと考えましょう。

 

あと、この工程で目の飾り付けもしました。
目はアニメ塗りに合わせて、ベタ塗りで飾り付けすると画面から浮きません。目のデザインや塗り方は、個人の好みでやるのが一番なので説明はしません。

11.背景デザインの方法

林檎坂マリコ

背景のデザインを追加します。今回は人物主体なので、背景は控えめに入れています。

 

主体はアニメ塗りなので、背景はアニメ塗りを使わず、淡いグラデーションにすると、アニメ塗りの強いベタ感が浮き出て、主体を目立たせることができます。

 

背景のグラデーションも、画面の半分を明るく、もう半分を暗くすることで豪華さを出せます。

 

★ここからは、CLIP STUDIOでの作業に移動します★

 

淡いグラデーションを白いスプレー(飛沫ブラシ)で飾り付けて、画面の豪華感を出します。背景のベタ感を抑えることで、主体の邪魔をさせないためです。

トーンカーブとグロー効果で加工して完成!

林檎坂マリコ

CLIP STUDIO PAINTでトーンカーブ加工とグロー加工をかけます。

トーンカーブで、赤味と青味をほんの少しだけ足しました。その後にグロー加工をかけます。

 

ここで気を付けたいのが、グロー加工に頼り過ぎないことです。

 

あまりにグロー加工を強くかけると、せっかくの画面がぼやけてしまい、アニメ塗りのベタ面の美しさが生かせません……。あくまで、画面を美しくすることを意識します。

 

最後に、顔周りに細い髪の毛を追加して情報量を足します。顔周りの情報量を多くすることで、顔に目がいきやすくなるからです。

 

これにて完成です!

終わりに

林檎坂マリコ

通常のアニメ塗りと比べて、豪華になっていると思いませんか?

林檎坂マリコ

アニメ塗りで豪華さを出すためのコツをまとめました。

  • 線画の色ベースを真っ黒でなく、馴染みやすい茶色か使う色に合わせる
  • 細かい影や塗りが完成度を高める
  • 顔に差し色を入れて程よく密度を出す
  • 面や影に主張しすぎない差し色をエアブラシでかける
  • 色の統一感を意識する
  • 背景はベタ塗りでなく、グラデーションをかけることで差別化

 

アニメ塗りはぷっくりして可愛いうえ、ビビッドな色の魅力をフルに活用できます。


塗りの情報量が控えめなので、衣装の情報量や小物を多くしても、画面がパンクすることなく、まとまりが出せます

 

レイアウト感覚で塗れるので、とっても楽しいですよ!

著・画 林檎坂マリコ

林檎坂マリコ

Twitter|@mariko_0913

Pixiv|http://www.pixiv.net/member.php?id=6199553


専修大学、人文・ジャーナリズム学科卒。嬉しいことに、線画と色を良く褒められる。人当たりの良さそうな人物を描くのがウリ。ほぼ通常レイヤーのみで絵を描いている。好きなゲームは、スプラトゥーン・逆転裁判・ポケモン・カービィ・ゼルダの伝説など。好きなアニメはつり球。