身体の仕組みから考える! 動物の描き方に役立つ知識

身体の仕組みから考える! 動物の描き方に役立つ知識

動物を描くのは難しいです。特に、見慣れない動物を描くときほど、形をとるのをひと苦労しますよね。

 

ひとつの理由は、猫や犬、馬などの身体の基本構造の知識があまりないからだと思います。そこで今回は、理科の授業を振り返るような気持ちで、動物の身体の仕組みや規則性について学んでいきましょう。

 

▼目次

動物のかたちを学ぶ

脊椎動物の進化

脊椎動物の身体の基本構造    

構造の比較

動物と人体の比較

ウマとヒトの骨格

歩き方と骨格の違い

 

 

動物のかたちを学ぶ

脊椎動物の進化

最初に動物を描くために必要な、身体の仕組みについて学びましょう。

今回は動物の中でも描く機会が多い、ウマやトカゲ、カエルなどといった脊椎動物を取り上げます。

動物 描き方

動物のうち、身体の内側に骨格を持つものを脊椎動物といいます。地球に最初に現れた脊椎動物は原始的な魚類の仲間です。

 

やがて、その原始的な魚類の仲間から、陸上を目指して進化を遂げたものがあらわれました。それが両生類です。さらにその両生類から、より陸上に適応した動物として爬虫類が生まれ、さらに爬虫類からより新しい環境に適応した恐竜、鳥類や哺乳類が誕生しました。


このように、すべての脊椎動物の共通の祖先は魚類であるため、より新しい時代に登場した脊椎動物には魚類の特徴が受け継がれています

 

脊椎動物の身体の基本構造

動物 描き方

続いて、様々な動物を描き分けられるようにするために、両生類・爬虫類・哺乳類基本的な身体の構造の違いを抑えておきましょう。

 

両生類

足が身体の横についています。また、半水棲のため、外皮は粘膜に覆われヌルヌルしているので、表面にはツヤがあります。

 

爬虫類

両生類と同じく足は身体の横についていますが、より陸上生活に適応してがっしりとしています。外皮は、乾燥に耐えられるように鱗に覆われています

 

哺乳類

走りやすいように足は身体の真下に生えています。外皮は、体温を維持するために毛皮に覆われています

 

構造の比較

動物 描き方

図3は原始的な魚類の胸ビレと、哺乳類の前足(ヒトの腕)、鳥類の翼を比較してそれぞれの骨の対応関係を示したものです。ヒトの腕は上腕骨や尺骨(しゃっこつ)などの骨が関節によってわかれていますが、魚類や鳥類も同じような構造をしています。

 

このように、形や役割こそ異なりますが、魚類の胸ビレの特徴・骨格はより新しい時代に登場した動物にも受け継がれています。このような形や役割はちがっても、同じ祖先に由来する現象を「相同」といいます。

 

似たような言葉に「相似」があります。これは、鳥の翼と昆虫のはねのように、由来は違っても同じような環境に適応した結果、身体の形や役割が似てくる現象をいいます。

動物と人体の比較

ウマとヒトの骨格

次に、動物と人体の比較をして、動物と人体の身体の共通点と違いを知り、キャラクターを描くために身に着けた知識を動物にも応用できるようにしましょう。

動物 描き方

図はウマとヒトの骨格をそれぞれの要素で色分けしたものです。ウマは四足歩行でヒトは二足歩行です。また、ウマは走ることに特化し、ヒトは手でものをつかむことができます。

しかし、形や能力が異なっても、両者の骨格には共通点が多いことがわかります。

 

ウマもヒトも、頭部から尻尾まで一本の脊椎でつながっています。頭部は形が違いますが、両者とも上顎と下顎とにわかれています。また胸部は肋骨で支えられており、腰には骨盤があります。前足(腕)は肩甲骨につながり、後ろ足は骨盤につながります。

 

ウマとヒトで構造が異なるのは、肩回りと腰回りです。通常、四足歩行の動物は前足で体重を支える比率が大きいため肩周りが発達しますが、人間は下半身で体重を支えるために、腰周りががっちりとしています。また、四足歩行の動物の多くは肩甲骨が身体の側面にあるのに対して、人間は樹上生活を営んできた祖先の名残で腕が大きく回せるように肩甲骨が背面にあります。

歩き方と骨格の違い

最後に、動物の歩き方と骨格の関連性を学び、それぞれの動物の足回りを違和感なく描けるようにしましょう。

動物 描き方

蹠行(せきこう)

足の裏(手のひら)全体を地面につける歩行のしかたです。

この歩行をする動物には、ヒトを含むサルやクマなどがいます。いずれも手足の扱いに長けた動物です。

趾行(しこう)

踵を浮かせつま先立ちする歩行のしかたで、休息時のみかかとをつきます。この歩行をする動物には、イヌやネコなどがいます。いずれも走ることを得意とする動物ですが、獲物を押さえ込むなど、ある程度前足を自由に動かすことができます。

蹄行(ていこう)

踵を完全に浮かせ、つま先のみを地面につける歩行の仕方です。この歩行をする動物は、ウマやウシ・シカといった有蹄類(つま先に蹄をもつ動物)です。

 

有蹄類の動物は、走行時の足幅をかせぐために手骨が極端に長くなり、人間のかかとに相当する部位の位置が高くなる傾向があり、見た目上関節が逆に曲がっているように見えます。これが、いわゆる「逆関節」の正体です。

まとめ

今回は、動物の身体の仕組みと規則性を勉強しました。今回取り上げた内容以外にも、動物の身体にはいろいろな特徴や規則性があります

 

次回から動物を描く際には、動物単体の資料を眺めるだけでなく、そういった規則性にも目を向けてみてはいかがですか?

著・画 四季まこと

フリーランスのイラストレーター・デザイナー。

普段は、ファンタジー・SFを中心に、ゲームの背景・コンセプトアート・キャラクター・クリーチャーなどを描いています。個人では草原を舞台にしたファンタジーの創作活動を行っています。書籍の装画・カードイラスト・コンセプトアートなどのお仕事を募集しております。

 

Pixiv: http://www.pixiv.net/member.php?id=10160

Twitter: https://twitter.com/makkou_4

web: http://makkou4ri.wixsite.com/bajo-shonen-sugu

 

参加タイトル

  • 株式会社タカラトミー様 「WAR OF BRAINS」カードイラスト
  • キヤノン株式会社様 ジオラマクラフト 背景
  • 株式会社ワコム様 イラストテクニック 講座
  • 株式会社玄光社様 『近景/中景/遠景の描き分けでイラスト・背景がみるみるうまくなる』 作例

など

参考

◯ 動物の身体の仕組みを学びながら動物の描き方を知りたい人のために

  • ジャック・ハム  (著), 島田 照代 (翻訳)、『動物の描き方』、建帛社
  • 宮永 美知代 (著)、『動物デッサンの基本(ナツメ社Artマスター)』、ナツメ社
  • テリル・ウィットラッチ (著), 大久保ゆう (翻訳)、『幻獣デザインのための動物解剖学:絶滅種・恐竜を含むあらゆる動物の骨格と筋肉』、マール社
  • W. Ellenberger (著), Francis A. Davis (著)、『An Atlas of Animal Anatomy for Artists (Dover Anatomy for Artists)』、Dover Publications; 2 Revised版

 

◯ 動物の進化の歴史を簡単に学びたい人に

  • Michael Benton (著), 鈴木 寿志 (翻訳), 岸田 拓士 (翻訳)、『生命の歴史-進化と絶滅の40億年 (サイエンス・パレット)』、丸善出版

 

◯ より専門的に学びたい人のために

  • エドウィン・H. コルバート  (著), イーライ・C. ミンコフ  (著), マイケル モラレス  (著)、『脊椎動物の進化』、築地書館
  • 加藤 嘉太郎  (著), 山内 昭二  (著)、新編 家畜比較解剖図説〈上巻〉、養賢堂
  • 加藤 嘉太郎  (著), 山内 昭二  (著)、新編 家畜比較解剖図説〈下巻〉、養賢堂