和風の空間「らしさ」とはどんなところなのでしょうか。今回は和風の空間の描くための室内背景の描き方を解説します。
和風と言うとどの時代の建築様式を指すかでも大きく変わってきますが、いわゆる和室、現存する寺社仏閣、武家屋敷や茶室、町屋などが特徴的かつ一般的かもしれません。
どっしりした瓦屋根、畳敷きの和室、塀の内には日本庭園を構え、深い庇(ひさし)に縁側といったイメージです。様々な時代、様式による建て方をされていますが共通して「和風の建物だな」と感じられる要素をお伝えします。
▼目次
和風の印象を与える背景の要素
「和風という印象を与える要素は何か」を考えます。例えば、上図の空間に和の要素を追加すると下図のような絵になります。
大きく特徴を踏まえると
- 素朴で直線的
- 規則的に並ぶ
が要素になります。各パーツをさらに細かく見ていきましょう。
素朴で直線的
和の空間は直線を基本に、機能美が追及されています。柱などは素材そのまま、仕上げ材になります。
そのため曲線は、
- 丸太を使った場合
- デザイン性を求める場合
くらいであまり登場しません。
そして色も木材の色をそのままに、塗装や艶は少なく、装飾なども和文様の彫りを施す場合を除き、少ないのが特徴です。
窓や出入り口の描き方
和は基本的に引き戸が多いです。片方の戸を片側に寄せ、開いたスペースで出入りする、そうすると必然的に横幅は広くなります。
夏を快適に過ごせるよう考えられた和建築は、西洋建築に比べて窓幅が大きい傾向にあります。
また木造建築の工法的な制約から、開口幅は戸4枚分までにします。ただ、それ以上幅の広い窓は現代建築の技術で可能になっているので、和モダンなどの雰囲気にしたいときに向いています。
壁・柱の描き方
洋室は柱を壁で隠していますが、和室は柱を覆わず見せる仕上げにします。
そのような和室の壁を真壁(しんかべ)といい、壁より少しだけ柱が出るように凹凸を表現します。壁は珪藻土などの土で仕上げているので、素材感を表す際はざらついたように描きます。あえて艶のある素材を使う場合は一部のみでアクセント的に取り入れます。
また建て方として和建築はほぼ柱のみで建っていると言えます。(もちろん壁もありますが)
最初に柱を建て、その柱の間に戸や壁を作るので、開口部(窓やドアやふすま、障子)の横には必ず柱があります。
上下階が繋がって見える吹抜空間などの場合はなるべく柱の位置を揃えます。
家具の描き方
和の空間は床座の空間です。そのため家具は圧迫感がないよう背(高さ)を低く抑えます。そしてそれらも室内の作り方と同じく直線が基本で、箪笥などは引き戸、引き出しが中心です。デザイン的には縦格子を用いるとより和風の印象が強まります。
座いすは和のアイテムですが、背もたれは背中の曲線に沿わせます。体に直接触れる家具は丸みをつくる、と覚えます。
規則的に並ぶ
建築物はモジュール(基準寸法)という単位に従って部屋の大きさ、窓の大きさ、出入り口の大きさなどが決まります。
例えば、和のモジュールは910mmを基準にしています。これを1として、各モノの対比が決まっています。また、部屋のサイズは1:2サイズ(=910:1820mm)の畳を何枚敷くかで、4.5畳間・6畳間・8畳間と決まります。
柱は1~4(=910mm~3640mm)毎に1本立てます。
全ての物がこのモジュールに従っているので、柱と畳が交差するところなど、その他各所もズレず、碁盤目のように交わります。
言い換えれば、縦横が不規則、ランダムに配置された窓や建具などがあると和の印象から離れるということです。
おわりに
和室らしく、障子や襖などの建具、畳の床など細部を描きこんで完成です。
以上、時代を問わず「和」を感じさせる要素をお伝えしました。この基本に好きな和要素を加えて、装飾を増やし豪華絢爛にも、曲がった木の線そのままの柱や炉を切り茶室風にも、装飾を減らし大きな開口を設けモダンにも、洋風の家具や照明・カーペットを合わせて大正ロマン、和洋折衷風にも自在にアレンジが可能です。
演出を変え様々な和空間を楽しんでください。
著・画 mig
Twitter:@to_to_i