説得力のあるキッチンの描き方 - 後編 -
2020.03.18
より魅力的に絵を仕上げる方法のひとつに「描写の説得力を上げる」があります。説得力を上げるには、自分の想像だけでなく実際の物をよく観察して、イラストに落とし込んでいく必要があります。
そこで今回は日常描写のひとつである「キッチン」にしぼり、説得力のある描写につながる知識や考え方をご紹介します。
キッチンを描く考え方ですが、キッチンは「天板」「シンク」「コンロ&フード」の3つがあれば完成します。構成要素はシンプルですが、キッチンは描き方次第で生活をいかようにも表現できる面白い題材です。ポイントを押さえて思い通りのキッチンを描きましょう。
▼目次
作業台の高さは80-95cm程度で、使う人の身長によって選びますが、主流なのは85cm前後です。
これは大人の腰の位置ぐらいの高さで、それより低いと座って食事をするテーブルのように見えてしまったり、高すぎても調理する人が子どもでない限り違和感を生みます。
身長の高い人にとっては作業台が腰より低い位置に来るので、人物の身長を表現する定規の役割も果たします。
吊り戸は手を伸ばしたときに扉に手がかかる高さにします。約150cm〜の位置で、目の高さよりやや上と覚えると良いでしょう。
また足元は爪先が当たることから少し引っ込ませます。
キッチンの幅はおおまか250cmが一般家庭の主流サイズです。
続いて、キッチンのレイアウトを見ていきましょう。
キッチンはI型やL、U型、アイランド型などのレイアウトパターンがあります。
I型は壁にくっついていたり対面式になっていたり、日本でよく見かけると思います。省スペース、効率性重視のパターンです。壁付は料理に専念したい人向きでもあります。
U型やL型は移動距離(導線)が短くでき調理しやすいパターンです。設置スペースが広く必要になります。
アイランド型やII型はシンクやコンロなどの一部、もしくはキッチン全体が浮島のように独立しているタイプです。これは複数人がキッチンに立つときに採用されます。
作業台が壁から離れることでお互いの動線を邪魔することがなく、キッチン内の渋滞が避けられるメリットがあります。
キッチンのレイアウトや内装仕上げ、置く小物でも生活水準や生活スタイルを表現できます。
庶民的な空間を表現したい場合はI型で描くと、説得力のある描写になります。
I型は省スペース向きという面からも広くはないキッチンで採用されやすく、庶民的な印象も与えられるからです。また団地や古い賃貸物件などは大抵が壁付のI型です。
L型やアイランド型は広いスペースを必要とするため、田舎の家や比較的富裕層の住宅や店舗で採用されます。
ワンルームなど単身者向けには作業スペ―スがほぼなく、一口コンロ、冷蔵庫一体型のミニキッチンがあります。
これらを踏まえて、キッチンのレイアウトも舞台の生活水準を考慮して決めましょう。
キッチンの内装仕上げもイメージ作りに重要です。細かなところですが、内装仕上げにもこだわることで説得力ある魅了的な背景描写ができます。
フローリングが一般の家庭でよく見られますが、タイル仕上げにすると少しこだわったインテリアになってきます。
例えば、ざらつきのある素朴なタイルでナチュラルカントリーに、艶のあるタイルでモダンな高級感を出したり幅広いイメージ操作ができます。また日本家屋では土間になっていたりします。
壁紙(ビニールクロス)で仕上げることが多いですが、コンロの周囲はつるっとしたパネルになっていたり、水がかかる場所には艶ありタイルを貼っています。これは防火の観点と油汚れから壁を守るためです。
大きめの正方形タイルを貼るとモダンな印象になりますし、小さなモザイクタイルなら個性的な印象になります。壁紙は色柄豊富ですので白い壁紙以外でおもしろい画面が作れます。
以上が前編です。
引き続き、後編ではキッチンの構成要素である天板やシルク、コンロ&フードに焦点当て、より魅力的なキッチン描写の考え方や知識をご紹介していきます。
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