「虎鶫 – Tsugumi Project」:フランスから日本へ! この漫画がどう生まれ、どう売られたのか?

 「虎鶫 – Tsugumi Project」:フランスから日本へ! この漫画がどう生まれ、どう売られたのか?

ご無沙汰しております!フランスの漫画出版社Ki-oon(キューン)のキムです。暑くなってきましたが、皆さん夏バテしていませんか?
さて、嬉しいことに弊社のオリジナル作品「虎鶫 – Tsugumi Project」の単行本が日本で発売されました!

  

▲フランス語版(左)と日本語版(右)の表紙。

 

以前「Lost Children」のライセンスについて書かせて頂きましたが、今回は「虎鶫 – Tsugumi Project」2巻の発売を記念に、このスペクタクル・アポカリプス漫画の誕生から海外版の刊行までの道のりをご紹介します。

 

▼目次

企画編:バンド・デシネ好きな者同士の出会いからの始まり

編集編:素晴らしい絵柄と壮大な世界観を生かしたい!

プロモーション編:最大のポテンシャルを引き出すための宣伝戦略

海外営業編:日本語版とイタリア語版発売

「虎鶫 – Tsugumi Project」の今後の展開に期待!

 

 

企画編:バンド・デシネ好きな者同士の出会いからの始まり

作者のippatu先生と出会ったのは2017年の春です。

 

フランスのコミック(バンド・デシネ)に触れる機会のあったippatu先生は、フランスの出版社に興味を持ち、バンド・デシネを日本で紹介する雑誌EUROMANGA(ユーロマンガ)のフレデリック・トゥルモンド編集長にまず声をかけました。その後、そのフレデリック編集長が弊社と繋げてくださいました。

 

ippatu先生に初めて資料や原稿を見せて頂いた時の感動をいまだに覚えています。素晴らしい画力!世界観もキャラも面白い!レオーネ、つぐみ、崩壊した日本……「虎鶫 – Tsugumi Project」の要素が既にそこにありました。ここまでファンタジーの世界を作り上げることができる作者は珍しいです。このチャンスは逃せません!すぐ企画を進めるようお願いしました。

 

ippatu先生も前向きに弊社とのやりとりに応じてくださり、数ヶ月かけ一緒に長編漫画の企画を練って行きました。

編集編:素晴らしい絵柄と壮大な世界観を生かしたい!

フランスでは連載雑誌もなく、デジタル市場も狭いので、紙の単行本を通して作品の良さを伝えるようにしています。

 

まずはippatu先生の絵の力で読者にアピールするために、フランス語版に9ページもの巻頭カラーを収録しました(日本語版の場合は巻頭カラーはデジタル版限定となります)。

    

▲1話の扉絵がカラーで収録されています。

 

また、おまけページを13ページも用意しました。世界観や、制作現場の裏側を見せることによって、読者に漫画への愛着を深めてもらうことを狙っています。

 

▲おまけページのデザイン。極秘ファイル風に仕上げて頂きました。

 

しかし、実際に単行本を手にとってもらうため、何よりも大切なのは印象深い表紙です。ippatu先生はハリウッド映画のポスターに近い構図を考えてくださいました。背景が歪み、主人公が読者目線でポーズを決め、謎に囲まれた獣が後ろに立っています… ダークファンタジーの青年漫画にぴったりです!
 

▲一巻の表紙を二つの色合いで作ってくださいました。一つは単行本の表紙に、もう一つはKi-oon Mag誌に使用しました。

 

フランス語版の表紙デザインを担当してくださったのは、経験豊富な事務所Hive&coです。ippatu先生のイラストを生かした極秘ファイルのようなレイアウトを作ってくださいました。宣伝効果が抜群です!

プロモーション編:最大のポテンシャルを引き出すための宣伝戦略

ippatu先生と制作を進めて頂いる間、私たちは宣伝企画を立てて行きました。フランスには漫画の連載雑誌という有力な看板がないので、単行本の発売前と発売時期のプロモーションが勝負です。マーケティング担当者の名言通り、「 各作品はフルポテンシャルを最初から発揮するために努力と予算を惜しまない。悔いがないように動くのだ!」

 

発売前、話題を集めたのはKi-oon Magです。連載誌ではなく、フルカラーの無料試し読み雑誌です。その年に発売されるオリジナル作品の1話と、各作家さんに関する特集記事が掲載されます。2019年1月発行のKi-oon Mag 2号の表紙に「Tsugumi Project」が中心になりました。その雑誌を2万部印刷し、全フランスの書店で配布しました。

 

▲2019年に発表されたKi-oon Mag 2号。「Tsugumi Project」の他、「Guess What !」、「終恋(Les Temps retrouvés)」、「エンドレス・ストーリーズ(Histoires sans fin)」が紹介されました。

 

更に、映画の宣伝と同じようにPVを作り、ネットとテレビに流しました。

▲フランスで制作されたPVが日本語版の宣伝に再利用されました。

 

また、書店向けに数多くの宣伝物を配布しました。大フォーマットのディスプレイや、ポスター付き無料試し読みリーフレットなど、読者に作品の面白さを伝えるために様々な仕掛けを用意しました。

  

▲クリアーファイル、ポスター、紙袋など、多くの宣伝物を読者にプレゼントしました。また、書店にはレオーネのディスプレイーを飾って頂きました。

 

最後に、待ちに待った発売日はヨーロッパ最大の漫画イベント、ジャパンエキスポの開催時期に合わせ、弊社のブースで大きくプロモーションしました。壁一面にイラストを飾ったり、販売コーナーで単行本にドッグタグをプレゼントしたり、巨大画面にPVを放送したりし、また、ファンには特殊コーナーでVR体験もしてもらいました!ホールに入ったら「Tsugumi Project」を見逃せません!

   

▲2019年7月のジャパンエキスポの弊社のブースの様子。単行本を購入した方にドッグタグをプレゼントしました。

 

 

▲VR体験コーナーも設置しました。パラシュートで無理やり東京に降ろされる感覚を味わいながらつぐみととらを追って行きます!ビルが倒れるから危ない!

 

こういった宣伝戦略が功をなし、注目作品となりました。読者からの評価も高く、メディアにも取り上げてもらいました。

 

▲フランスの漫画・アニメ専門雑誌ANIMELANDで掲載された「Tsugumi Project」に関する記事。

 

宣伝からまもなくして、ありがたいことに豪華なポスターを制作しているイマージュ・デリゾワール社(Les Images dérisoires)からもオファーを頂き、素敵なサイン入りポスターのライセンスが決まりました。

 

▲ippatu先生のサイン入りポスター。

海外営業編:日本語版とイタリア語版発売

ジャパンエキスポはフランス人のファンのみならず、全世界の漫画業界の方が訪れる場です。「Tsugumi Project」を海外の出版社にも注目してもらう絶好の機会でした。イベント後も営業を続けた結果、次の年に日本語版とイタリア語版のライセンスが決定しました!

 

(ライセンスについてもっと詳しく知りたい方はぜひこちらの記事を是非ご覧ください。)

 

日本では「アキラ」や「攻殻機動隊」という伝説の漫画を発表した青年雑誌・週刊ヤングマガジンで2021年1月から連載が開始しました。

 

日本語版の刊行に当たり、ippatu先生の希望に沿ってタイトルが「虎鶫 – Tsugumi Project」に変更され、日本向けのカバーデザインが制作されました。株式会社ボラーレが担当したこの新表紙は日本市場の特徴を考慮し、つぐみを中心にしました。


6月4日に発売された1巻は、3日後に重版、翌月に再重版が決まりました!8月6日に発売されたばかりの2巻はどうなるのでしょうか?

 

更に、同年7月7日イタリア語版も発売されました。宣伝用にippatu先生が素晴らしい色紙を執筆しました。イタリアのファンが大喜びするに違いありません。

 

▲イタリア用の色紙は一枚どころか、三枚にかけて描かれたイラストです。

 

全世界でヒットした「僕のヒーローアカデミア」の堀越耕平先生にまで推薦して頂いたこの漫画がどこまで伸びていくでしょうか。とても楽しみです!

「虎鶫 – Tsugumi Project」の今後の展開に期待!

コミック好きの者同士の出会いから始まった「虎鶫 – Tsugumi Project」がここまで大きくなったのは大変嬉しいことです。フランス、日本、イタリアを始め、多くの国の読者に感動を与えています。

 

「虎鶫 – Tsugumi Project」を応援してくださっている皆様には、感謝してもしきれません!まだ読んだことない方、無料試し読みを是非ご覧下さい。国境を超え、読者層を拡大するように今後も最善を尽くします!

漫画企画を募集中です!

Ki-oon公式ウェブサイト(フランス語のみ) : http://www.ki-oon.com/

東京オフィス公式TWITTERアカウント(日本語):@Kim_Ki_oon 

 

東京オフィス連絡先:

代表名:キム・ブデン

住所:c/oフランス商工会議所

     〒103-0023 東京都中央区日本橋本町2-2-2 日本橋本町YSビル、2階

メール:mochikomi@ki-oon.com

電話番号:03-4500-6668

 

 

Ki-oonの東京オフィス代表キム・ブデンについて:講談社の国際事業局で四年半働いた後一旦帰国、三年半フランスの漫画出版社・PIKAの編集長として勤め、2015年の10月からKi-oonの在日オフィス代表として日本に戻り、現在に至る。

 

漫画企画を募集しています!

 

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